胎児とマグネシウム①
最終更新日時 : 2025.01.10
胎児の発育には各種栄養素、ミネラルが必要とされ、これらは母体から胎盤を経て供給されます。近年、その不足による子宮内発育遅延と成人期の生活習慣病が関係するという疫学データが報告されました。
Barkerらは大規模な疫学調査からFetal programming theoryを提唱しました1)。この仮説は胎児期の低栄養に対する適応(倹約表現型)によって代謝・内分泌・生理機能などがプログラムされ、将来成人になってからの疾病(高血圧、虚血性心疾患、2型糖尿病、高脂血症などのいわゆるメタボリックシンドローム)を発症するというものです。
一方、低マグネシウム血症がメタボリックシンドロームと相関する疫学・実験データは数多く報告されています。母体のマグネシウム摂取不足が胎児のマグネシウムバランスと出生後の将来にも影響すると考えられます。私たちはヒト臍帯血の細胞内マグネシウムが出生体重と有意な相関があり、しかもインスリン抵抗性を示す指数とも強い相関があることを報告しました2)。すなわち、胎児期の細胞内マグネシウムの低下が、将来のインスリン抵抗性を決定することを裏付けました。
参考文献
1) Barker D. Fetal origins of coronary heart disease. BMJ. 1995, 311:171-4.
2) Takaya J, et al. Intracellular magnesium and adipokines in umbilical cord plasma and infant birth size. Pediatr Res. 2007, 62:700-3.