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脳梗塞予防でマグネシウムの働きによる驚くべき効果 

脳梗塞予防でマグネシウムの働きによる驚くべき効果 

最終更新日時 : 2025.09.25

マグネシウムは「体の調整役」

マグネシウムは、骨や筋肉、血管、神経など、体のあらゆる機能を支えるミネラルです。体内にあるマグネシウムの多くは骨や筋肉に蓄えられていますが、実は血液の中にある量はごくわずか。それでも、このわずかな濃度の変化が健康に大きな影響を与えることが分かってきました。

特に腎臓は、マグネシウムの量を調整する大事な臓器です。腎臓がうまく働かなくなると、マグネシウムの出し入れが崩れ、骨や血管、心臓の健康にまで影響が及ぶ可能性があります。

慢性腎臓病(CKD)とマグネシウムの関係

今回紹介する論文(日本透析医学会誌, 2018)では、慢性腎臓病(CKD)の患者さんにおけるマグネシウム代謝と健康への影響が詳しく解説されています。

  • 腎機能が低下すると…
    マグネシウムを排泄する力が弱まり、血液中の濃度が上がる場合があります。ただし初期〜中期の段階では体がある程度バランスを保とうとするため、大きな変動は起きにくいとされています。
  • 骨への影響
    マグネシウムが不足すると、骨の形成が妨げられ、骨量の低下や骨折リスクの増加につながります。透析患者の調査でも、血清マグネシウムが低い人ほど骨折が多いことが報告されています。
  • 血管への影響
    CKD患者では「血管の石灰化(カルシウムが血管に沈着する現象)」が進みやすく、心臓病の大きなリスクになります。マグネシウムは血管平滑筋の石灰化を抑える働きがあるとされ、動物実験や臨床研究でもその効果が示唆されています。
  • 心血管疾患・予後
    疫学研究では、血清マグネシウムが高めの人は心臓病や脳卒中のリスクが低い傾向があると報告されています。逆に低いと、心血管イベントや死亡率が高まるというデータもあります。

マグネシウム補給の可能性と課題

研究では、CKDや透析患者にマグネシウムを補給すると、血管石灰化の進行が抑えられる可能性があるとされています。透析液中のマグネシウム濃度を調整することで、血管や骨への影響を和らげられるのではないかという期待もあります。

ただし、注意すべきは「取りすぎ」リスクです。腎機能が低下している人は排泄が難しいため、過剰な高マグネシウム血症につながる恐れがあります。そのため、安全で最適な範囲を見極めることが大きな課題です。

研究から見える未来

この論文を通じて見えてくるのは、「マグネシウムはただのミネラルではなく、骨や血管、心臓を守る重要なカギを握っている」という点です。

しかし、まだ分かっていないことも少なくありません。

  • CKD患者にとって理想的な血清マグネシウムの範囲はどこか?
  • 長期的に補給することでどんなメリット・デメリットがあるのか?
  • 健常者や高リスク群での影響はどうか?

今後、より多くの臨床試験や研究の積み重ねが、この問いに答える手がかりを与えてくれるでしょう。

まとめ

マグネシウムは、骨の健康から血管、心臓までを幅広く支える「調整役」としての重要性が改めて注目されています。慢性腎臓病の研究をきっかけに、一般の健康維持においても「日々の食生活やサプリメントを通じてマグネシウムを意識すること」の大切さを示していると言えるでしょう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/51/11/51_657/_pdf

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